PCなんかでトラブルがあったり、映像の編集を迫られたりしたとき、PCにフリーのソフトをがちゃがちゃインストールして、結果、何もできなかった、という経験はないだろうか。
僕はある。
しかもそれらのソフトは、しばらく時間がたつと、何のソフトだったか思い出せもしないし、かえって深刻なトラブルに巻き込まれることも多い。
昨日「白痴」の上演が終わった。
アトリエ公演、しかも2日間だけの上演だったので、ほんの100名ほどに観ていただいただけだが、いろいろな感想があり、ありがたい。しかし、まずは安吾の言葉を信じ、頼り切ったのが、よかったんじゃないかと思っている。
ご存知の通り、安吾には「堕落論」などの優れたエッセイも多いので、当初はいろいろな言葉を盛り込もうと思ったりもしていたが、やはりシンプルに「白痴」だけにしたのが、まあ、よかったんだと思う。がちゃがちゃ取り込まずに、目の前の言葉を見つめた結果だった。
小説の言葉は、やはり小説の言葉である。
モニターをみたり、舞台の俳優を見たり、アトリエの壁に映し出された映像を見たり、「どこを見てよいものかわからない」という感想は多かったが、その意識の隙間に、ねじりこまれるように、安吾の言葉が挿入される、そんな演出プランだった。
脳に無数のコードが差し込まれている。
舞台にあった電子機器は、安吾の時代には何一つない。おそらく、これから50年もたてば、今では考えもつかないようなものに、舞台が占拠するかもしれない。もちろん舞台とは、私たちの生活と地続きの空間と考えてくださってかまわない。そんな思いもあった。
通し稽古を見た、制作の河野が言った。
「新しいことをやらなくてはいけない。」
時々、いいことを言う奴だ。本当にそうだな。
「白痴」の稽古がはじまって2週間くらいは、怖くて怖くて仕方なかった。「今なら辞められる」と思ったことも何度かあった。「演劇になるのか」という不安もあった。しかし、その恐怖を乗り越えなければ、次には行けないのだな。本当に。
再演はやるつもりです。今回、都合のつかなかった方は、次回の上演をお楽しみに。
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